水中遺跡調査の始まり:沈没船遺跡研究
1960年に水中考古学調査が始まり、トルコ沖地中海での紀元前1,200年頃のケープ・ゲラドニャ沈没船がアメリカの大学のジョージ・バスらによって調査された。「考古学者が、陸上と同様の調査を水中で行う」という理念を掲げ、青銅器文明の繁栄を支えた青銅原材料の海上輸送の実態を、沈没船調査で明らかにした。起源前3500年前のウルブルン沈没船(下写真:INA提供、『海洋考古学入門』より)は、彼ら調査した最古の沈没船遺跡として知られる。こうして沈没船遺跡研究を主体とする船の考古学(Nautical Archaeology)が広がり、大学に研究所が設立された。
海洋考古学(Maritime Archaeology) とは?
日本では、海底遺跡や沈没船を対象とした水中考古学(Underwater Archaeology)をイメージする人が多い。実際には、もちろんダイビングを伴う水中考古学の手法は必須であるが、研究分野としては、船舶や海運史に関わる海事考古学(Nautical Archaeology)、さらには人類と海の関わりにアプローチできる島嶼考古学(Islands Archaeology)や沿岸考古学(Coastal Archaeology)、人類による魚類・貝類・海洋哺乳類の利用からアプローチする動物考古学(Zoo Archaeology)を含む。
現在、日本で海洋考古学やその関連分野について学べる大学はまだ限られています。こうした状況の中、東海大学(海洋学部・海洋文明学科)は考古学を専門とする3名の教員による指導の下、潜水による水中・海事考古学調査の基礎から応用(写真上:屋良部海底遺跡での調査風景)、さらには陸上遺跡の出土遺物を分析する上述の海洋考古学の実践までを含む充実した教育プログラムがあります。